不思議な少年と島。
ある日一隻の船が沖に出た。
その日は一日中晴れるという予報だったが、午後になって突然空が荒れた。
荒波に船は激しく揺れ、バケツをひっくり返したどころではない量の雨で視界は不良。
船員たちの気づかぬうちに船は沖へ沖へと流されていった。
どのくらい時間が経っただろうか。
いつの間にか気絶していたらしい、船員の一人が目をさますと、記憶の最後にある光景が嘘のように空は晴れ、海は波一つなくそこにあった。
そして、船員の目の前には空に頂が付いてしまいそうなほど大きな山があった。
船の中には自分以外の仲間はいない。
もしかしたらこの島のどこか別の場所に流れ着いているかもしれないと思い、彼は船を降り島を廻った。
山の中腹あたりだろうか、彼は洞窟を見つけた。洞窟の中は暗く、どこにつながっているのかわからないが、洞窟の中から風が吹いてくる。向こう側につながっているのだろうか。若い彼は好奇心半分に洞窟を進むことにした。
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洞窟を抜けたその先には"街"があった。
彼は自身の目を疑った。頭上には雲と太陽。街を歩けば摩訶不思議な生物たちが人間のように服を着、日本の足で立ち、歩いていた。世界中のどこを探しても無いような言語で会話をしていた。
一匹の生物が話しかけてきた。何を言っているのかわからない。しかし悪い感じはしない。
彼が困惑していると周りの生物たちがざわめき出した。
彼らの視線の先にいたのは人間だった。
20にもなっていないだろう少年だった。
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少年はこの島で唯一の人間だという。
この島の時間の流れは遅いということ、少年は実際であれば30はとうにすぎている年齢だということ、島の住民のこと、たくさんのことを聞いた。
彼は頭上の空のことを聞いた。
山の中に太陽があるなんてどういうことだ、と。
少年はただにこやかに笑っていた。
少年は島に流れ着いたのは彼一人だと言った。
島には島の周りを見て回る役割があって、(大抵は羽根を持っているものが行うのだが)今日の担当が先ほど帰ってきたのだという。
見たことの無い船があるだけで他には何も見当たらなかったと言っていたらしい。
彼は肩を落とした。恐らく、自分以外の仲間はあの荒波に連れて行かれてしまったのだろう。
少年は彼に一晩泊まっていくことを勧めたが彼は変えることにした。
幸い船に異常は無かった。
彼が出発しようとしたその時、少年が船に乗り込んできた。どうしたのかというと、少年は答えて無い質問があったと微笑んだ。
「僕はね、僕にはね、天気を生み出す力があるんだ。あの太陽は僕が作った。」
彼は驚きに言葉を失った。
彼が困惑しているうちに少年は船から降りた。
ちょうどその時、押し寄せた波に船は沖へと引っ張られた。
"足元に気をつけて"
そんな少年の声が聞こえた気がした。
テレビをつけると最近人気の男性アナウンサーが今日の出来事を伝えているところだった。
『本日未明、………で一隻の船が発見されました。発見され…は数ヶ月前から行方不明………号で……。船は無人……海上保安庁はさらに捜索を……』
-完-